医療問題の最近のブログ記事

早いものでもう4月ですね.
皆様,新年度でお忙しいと思います.
当院も平成22年度の診療報酬改定でバタバタしています.
さて今日の話題は巷でも話題の「明細書発行体制等加算」についてです.

皆様は病院でかかる医療費について,その価格はどのように決められ,どのように決定されるのかご存知でしょうか?
医療費は診療報酬といって,中央社会保険医療協議会というところで決定される公定価格です.
2年に1回改訂されて,今年の4月から新しい診療報酬体制となりました.
診療報酬は公定価格ですので,同じ規模の医療機関で同じ治療を受ける限りは,全国どこでも同じ診療報酬です.
良く皆さんから「あそこの病院は安い」とか「高い」などの声を聞きますが,それは正確には誤りです.
診療の内容が微妙に違うか,例え全く同じ治療でも病院の規模が異なると,診療報酬が異なってきます.

それにしても,診療報酬の計算方法は複雑です.
長年医療に携わってきても,いまだに理解に苦しむことがとても多いです.
なんでこの治療がこの点数(診療報酬は点数で表します.1点=10円で3割負担なら患者さんの負担額は1点あたり3円です)なのか?
この「〜加算18点」とか「〜管理料225点」ってなんなのか?

今年も全国的に話題となっている改訂がありました.
明細書発行体制等加算」と「地域医療貢献加算」です.
後者については問題がありすぎるのでまたの機会に考えるとして,今日は「明細書発行体制等加算(1点)」について考えましょう.

これまで皆さんは病院に受診して,治療費を支払った際に領収書を貰っていたと思います.
その領収書の内容は大雑把で,何にいくらかかったのかが解りませんでした.
この明細をハッキリさせるために,今年の4月より一部の対応不可能な医療機関を除いて,領収書とは別に明細書の発行が義務付けられました.
当院でも4月1日より領収書と明細書の発行を行っています.

国民皆保険が達成されたのが昭和36年.(結構最近なのですねぇ)
我が国では社会保障費増大による国家財政悪化(医療費亡国論)から,積極的に医療費削減を行ってきました.
改訂に次ぐ改訂で,現在の診療報酬体系は大変に複雑怪奇なものとなっています.
一筋縄で理解出来るものではなく,全てを理解で来ている人間なんて(診療報酬を決めている側でも)存在しないんじゃないかって思う事があります.

そこで明細書の発行義務化です.
これを発行出来る体制の医療機関は再診料に1点(10円)加算されます.
皆さんも受診した際に明細書をご覧になってください.
はっきりいって理解困難です.
説明せよと言われても,簡単に理解して頂けるように,簡素に説明出来る自信がありません.
それだけ複雑なのです.

国民皆保険は,全国民が平等に均質な医療を受ける事の出来る良い制度です.
アメリカ合衆国だって,ずっと以前から達成出来ず,オバマさんでやっと出来そうになっている制度です.
日本はもう昭和36年からやっている訳です.
なんとかこの優れた制度を壊さないで継続させたいものですが,医療費削減が「医療崩壊」の一因ともなっていると考えられ,存続が危ぶまれています.

当院では場所柄か,米国在住邦人の方が一時帰国の際に受診し,全額自費診療(10割負担)でも良いので長期処方を希望される方が大勢見えます.
アメリカで医療機関に受診するより,全額自費でも良いので日本で診療してもらった方が,比較にならないほど安いんだそうです.
医学的な観点から,長期処方は好ましくないと伝えても,アメリカで医療難民になっているよりはずっとマシだと言われると返答に困ります.

いろいろな理由から明細書発行には反対の意見も多く聞こえますが,私は皆さんが日本の医療事情を考え直す良い機会ではないかと考えます.
日本では患者さんの窓口負担割合が多いので医療費は高いと感じる方が多いと思いますが,世界的に見れば低医療費国家なのです.

不謹慎かもしれませんが,最後に医療のお値段について具体例を.
心臓マッサージってご存知でしょうか?テレビドラマでもよく見る,心肺蘇生術のひとつで,心臓が動かない患者さんの胸郭をリズミカルに圧迫して,心臓を動かすアレです.やらないと患者さんは死んでしまいます.
心臓マッサージ(非開胸式)を60分間行うと290点です.
つまり医療費は2900円(3割負担なら負担金870円)です.
駅前のマッサージ屋さんで肩のマッサージしたって60分もやったら6000円はしますよね.
これで良いんですかね?
ご気分を害された方には,申し訳ありませんでした.
医療は聖職なのだから,そんなことは人として聖職者として無償で行うものと考えがちです.
医療に値段を付ける事は,とても残酷な事だと思いますが,そろそろみんなで真剣に考えるときが来ていると思いますよ.

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