温泉医学の最近のブログ記事

お久しぶりです.
また3ヶ月もブログ更新をサボってしまいました.
これからはも,心機一転,様々な情報を発信いたしますので宜しくお願い致します.

さて今回のお話は温泉療養の続きで,その作用メカニズムについてご紹介したいと思います.
実は未だに解明されていない事も多いのです.

温泉治療のメカニズムとしては次の3つの作用が考えられています.
1)物理的作用
2)化学的作用
3)総合的生体調整作用

1)物理的作用
温熱,静水圧,浮力,粘性などの物理的な作用です.
これは温泉に限った事ではなく,水道水でも得られる作用です.

2)化学的作用
温泉に含有されている化学物質による作用です.
含有されている成分(泉質)により,いろいろな効能が知られていますが,科学的な実証がされていないものも多く,言い伝え等により伝承されている効果もあります.
温泉治療のメインメカニズムがこの化学的作用だけであるならば,入浴剤などにより代用出来てしまうはずですよね.
でも,皆さんもそれだけではないことを経験的にご存知のことと思います.

3)総合的生体調整作用
私はこれが温泉治療の主要な作用機序ではないかと考えています.
非特異的変調作用とも言われています.
温泉治療は,温泉に入浴する事だけで得られる物理化学的な反応ではなく,その温泉地の気候,風土,文化,食生活などに触れ親しむ事により,総合的に生体を調整する作用であると考えられています.
よって短期の滞在では効果が弱く,少なくとも2週間の湯治が推奨されています.

写真は2000年の温泉気候物理医学会総会でのものです.
中伊豆温泉病院院長先生と
私もまだ若いですねぇ


onki2000.jpg


また長期間ブログ更新をサボってしまいました.

本日,6月4日は栃木県の那須塩原温泉にて
第75回 日本温泉気候物理医学会総会・学術集会
が開催されましたので.クリニックを休診にして参加してきました.
本日休診と知らずにクリニックまで直接来院されてしまった患者様には,大変にご迷惑をおかけしました.
しかし色々な知識を吸収でき,またお世話になった先生方とも再会する事が できたため,とても有意義な学会でした.

これまで温泉医学は伝統に支えられてきており,あまり科学的な検証がされてきませんでした.
現在はこれを科学的に確かめてみようという動きが活発になっています.
いろいろな研究成果の発表がありどれも興味深かったのですが,今日は身近な伝統入浴法の科学的な検証を1つご紹介したいと思います.
国際医療福祉大学前田教授のご報告です.

ゆず湯,みかん湯,どくだみ湯などの温浴効果ですが,いずれも真湯の入浴に比較して,入浴中の体温上昇効果は優れていました.
さらにゆず湯,みかん湯では入浴後の保温持続効果も優れており,出浴後も長時間保温効果が維持されていました.
これに対してどくだみ湯では,出浴後すぐに体温が元の状態に戻っており,むしろ真湯入浴よりも下がっているように見られました.
これと同様の効果は炭酸泉などでも見られる事があり,炭酸泉入浴後の清涼感・スッキリ感につながっているのではないかと考えられています.

以上の結果を療養として活用するには,
寒い時期,暖まりたい場合はゆず湯,みかん湯などを,暑い時期の入浴後サッパリしたい場合はどくだみ湯ということになります.

onki100604.jpg

温泉療養の話はまだまだ続きます.


今日のブログは温泉療養の続きです.

皆様ゴールデンウィークはいかが過ごされたのでしょうか?
温泉なんかにも行かれた方がいらっしゃると思います.

さて,日本人にとってはとても身近な温泉についてですが,そもそも温泉とはなにかご存知ですか?
改めて考えてみると良くわかりませんよね.
実は温泉とは法律で定義されたものなのです.

温泉は,昭和23年に制定された「温泉法」により,地中からゆう出する温水,鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で,以下の温度又は物質を有するものと定義されています.

1. 温度(温泉源から採取されるときの温度) 摂氏25度以上
2. 物質(以下に掲げるもののうち,いずれか一つ.それぞれ物質名/含有量(1kg中))

溶存物質(ガス性のものを除く)/総量1,000mg以上
遊離炭酸(CO2)(遊離二酸化炭素)/250mg以上
リチウムイオン(Li+)/1mg以上
ストロンチウムイオン(Sr2+)/10mg以上
バリウムイオン(Ba2+) 5mg以上
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+)(総鉄イオン/ 10mg以上
第一マンガンイオン(Mn2+)(マンガン(?)イオン)/10mg以上
水素イオン(H+)/1mg以上
臭素イオン(Br-)(臭化物イオン)/5mg以上
沃素イオン(I-)(ヨウ化物イオン)/1mg以上
ふっ素イオン(F-)(フッ化物イオン)/2mg以上
ヒドロひ酸イオン(HASO42-)(ヒ酸水素イオン)/1.3mg以上
メタ亜ひ酸(HASO2)/1mg以上
総硫黄(S) [HS-+S2O32-+H2Sに対応するもの] /1mg以上
メタほう酸(HBO2)/5mg以上
メタけい酸(H2SiO3)/50mg以上
重炭酸そうだ(NaHCO3)(炭酸水素ナトリウム)/340mg以上
ラドン(Rn)/20(百億分の1キュリー単位)以上
ラジウム塩(Raとして)/1億分の1mg以上

つまり,地中から出て来た真水でも25℃以上あれば温泉です.
25℃未満で冷たくても,上のなにかが溶けていれば温泉です.
その他,液体でなくてもガス状でも上記を満たせば温泉です.

なんだか旅番組などでみる温泉とは,だいぶイメージが異なりますね.
また,温泉のうち特に治療の目的に供しうるものを療養泉と呼び,こちらも法律で定義されています.

温泉とはなにか解ったところで,次回はその医学的な作用や適応症についてみていきましょう.

つづく

今回から数回に分けて温泉医学・温泉療養についてご紹介したいと思います.
まずは温泉医学のお話の前に,補完代替医療の説明をしましょう.

我が国では古くより病気の療養目的で温泉が利用されてきました.
当時はリウマチや肺結核などの良い治療法もなく,温泉地に長期間滞在し,温泉に浸かって病気を療養していました.
このような療養目的で温泉地に長期滞在することを「湯治(TOUJI)」といいます.
私はこのトウジという響きが結構好きです.
なんだが癒しているような雰囲気で良いですよね.

近年になり医学は急激に進歩し,今まで難病とされてきた病気もだんだんと原因が解明され,それに伴い治療法も劇的に進化しました.
医療の分野では,治療のエビデンスが求められるようになり,EBM(Evidence Based Medicine;科学的根拠に基づいた医療行為)が重要視されています.
温泉療法などの伝統的に行われてきた民間療法は,最新医学のようなエビデンスは乏しいかもしれませんが,代替療法や補完医療として近年注目されています.
また,最新医療と補完代替医療を両方とも組み合わせて全人的に治療を行うことを統合医療とよんだりします.

「医学」という言葉と,「医療」という言葉は同じようで,全く違う意味合いの言葉ではないかと勝手に解釈しています.
私のイメージする「医学」とは,自然科学のことであり学問・サイエンスなのであります.
学問学術的な世界で重要視されることは科学的真理性です.
エビデンスがやっぱり大事なのであります.
「医学」の急激な進歩により私たちは多大な恩恵を受けています.
たった100年前までは主な死因は結核や肺炎などの急性感染症でしたが,治療薬の開発などにより疾病構造は激変し,現代の主な死因は悪性腫瘍(癌),心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病です.平均寿命はどんどん更新され,長寿社会を実現しました.
しかしこの「先端医学」をもってしても現代社会では万能ではないのです.
生命現象は分からないことだらけであり,最新の医学知識を駆使しても分からないことが多くあります.

大きな病院で全身精密検査を行っても,病気の原因が解明出来ないことがあります.
原因が分からないのであれば,科学的根拠に基づいた適切な対応は難しいかもしれません.
また,病気の原因が分かったとしても,すべての人が同じ治療により同じ効果が得られるとは限りません.
人間には多様性があり,また医学には限界があるからです.

それでも私たち医療者は,患者さんの病気をなんとか治療しなくてはなりません.
私のイメージする「医療」とは,学問ではなくて,患者さんを中心とした患者さんのための医療行為全般を指しています.
最新の医学的知識(サイエンス)を基礎にして,エビデンスのある治療を行うことが最も合理的であり,第1選択です.
しかし,それだけでは良い結果が得られない場合も多々あります.このような場合に,患者さんの生活の質を高めるためには補完代替医療が有益であることが少なくありません.

補完療法には温泉療法のほかにも,漢方治療,鍼灸などが代表的で伝統的に昔から親しまれています.近年では芳香療法(アロマセラピー),アーユルヴェーダ,ホメオパシー,音楽療法,アニマルセラピーなど多様な補完治療が行われています.
これらのなかにはエビデンスのあるものもあり,近代医療を補完する存在として期待されています.

患者さんによっては補完医療が非常に有効なケースもあります.
でもそれで満足してしまって,一般の診療を中断してはいけません.
補完的治療は継続しながらも,バックグランドに大きな疾病が隠れていないのかを,常に科学的な眼で観察してゆく必要があります.
補完医療は,近代医療の補助的な存在であることを忘れてはなりません.

今回は,補完医療としての温泉医療の位置づけについてお話させていただきました.
次回は温泉療法のもう少し具体的な内容について説明します.

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうち温泉医学カテゴリに属しているものが含まれています。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

温泉医学: 月別アーカイブ

Powered by Movable Type 4.01