医学の最近のブログ記事

1月8日と15日に緩和ケアの研修会に行ってきました.
このため土曜日の外来を少し早めに終了し,お急ぎの患者様にはご迷惑をおかけしました.

みなさん緩和ケアって知っていますか?
緩和ケアとは,主にガン患者さんの不快な症状を緩和するためのケアです.
日本の死因統計によると,日本人の死因の第1位は悪性新生物すなわちガンです.
ガンでお亡くなりになっているのですから,治療経過中に必ず緩和ケアを受けることになります.

みなさん,まだ他人事と考えていませんか?
生きていれば人間は必ずいつかは死にます.日本ではガンでなくなる確率が一番高いのです.
いつかは緩和ケアのお世話になる日がやってくるのです.

厚生労働省は,がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画(平成19年6月15日閣議決定)において,「すべてのがん診療に携わる医師が研修等により,緩和ケアについての基本的な知識を習得する」ことを目標としています.
これを受けて全国各地で緩和ケアの研修会が開催されています.
今回,PEACE projectという緩和ケア研修会を受けてきました.

私がまだ医学生だった頃は緩和ケアにかんする授業は少なく,医師になってから現場に放り込まれて肌で学ぶような状況でした.まさに患者さんから教えて頂くということで鍛えられました.
これまでにも多くのガン患者さんの臨終に付き添ってきましたから,今回の研修を少し甘く考えて参加しました.

とてもハードな2日間でした.
投薬テクニックなどは既知のことですので,それまでの知識を再確認する程度で全く疲れません.
しかし,ロールプレイというセッションが組み込まれていて,これが精神的にもかなり疲れました.
ロールプレイでは,参加者同士が医師ー患者ー評価者役になりきって,シビアな病状説明を行う「劇」を演じて,お互いの診療を評価し合うということを行います.
これを役を入れ替えて,グルグルいろいろな劇を続けるのです.
参加者が皆ドクター(しかも大きい病院の院長先生とか,部長の先生とか第一線の先生ばかり)ですので,ドクター同士で劇を行います.

普段,自分の診療スタイルを同業者から評価されることに慣れていないので,医師役もそれなりに疲れるのですが,なんといっても患者役はつかれました.
患者背景や病状をかなりリアルに設定して,しっかり役作りをして劇を演じるので,作り話だとは分かっていても第一線のドクターから,進行がんで治癒が見込めないことを告知されると,精神的に結構疲れます.

医師役のときに周囲のドクターから評価されたことより,患者役として感じたことが,今後の自分の診療スタイルに多いに役立ったと感じました.

写真は今回,会場で研修会を開催していただいた北里研究所病院さんです.

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今回から数回に分けて温泉医学・温泉療養についてご紹介したいと思います.
まずは温泉医学のお話の前に,補完代替医療の説明をしましょう.

我が国では古くより病気の療養目的で温泉が利用されてきました.
当時はリウマチや肺結核などの良い治療法もなく,温泉地に長期間滞在し,温泉に浸かって病気を療養していました.
このような療養目的で温泉地に長期滞在することを「湯治(TOUJI)」といいます.
私はこのトウジという響きが結構好きです.
なんだが癒しているような雰囲気で良いですよね.

近年になり医学は急激に進歩し,今まで難病とされてきた病気もだんだんと原因が解明され,それに伴い治療法も劇的に進化しました.
医療の分野では,治療のエビデンスが求められるようになり,EBM(Evidence Based Medicine;科学的根拠に基づいた医療行為)が重要視されています.
温泉療法などの伝統的に行われてきた民間療法は,最新医学のようなエビデンスは乏しいかもしれませんが,代替療法や補完医療として近年注目されています.
また,最新医療と補完代替医療を両方とも組み合わせて全人的に治療を行うことを統合医療とよんだりします.

「医学」という言葉と,「医療」という言葉は同じようで,全く違う意味合いの言葉ではないかと勝手に解釈しています.
私のイメージする「医学」とは,自然科学のことであり学問・サイエンスなのであります.
学問学術的な世界で重要視されることは科学的真理性です.
エビデンスがやっぱり大事なのであります.
「医学」の急激な進歩により私たちは多大な恩恵を受けています.
たった100年前までは主な死因は結核や肺炎などの急性感染症でしたが,治療薬の開発などにより疾病構造は激変し,現代の主な死因は悪性腫瘍(癌),心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病です.平均寿命はどんどん更新され,長寿社会を実現しました.
しかしこの「先端医学」をもってしても現代社会では万能ではないのです.
生命現象は分からないことだらけであり,最新の医学知識を駆使しても分からないことが多くあります.

大きな病院で全身精密検査を行っても,病気の原因が解明出来ないことがあります.
原因が分からないのであれば,科学的根拠に基づいた適切な対応は難しいかもしれません.
また,病気の原因が分かったとしても,すべての人が同じ治療により同じ効果が得られるとは限りません.
人間には多様性があり,また医学には限界があるからです.

それでも私たち医療者は,患者さんの病気をなんとか治療しなくてはなりません.
私のイメージする「医療」とは,学問ではなくて,患者さんを中心とした患者さんのための医療行為全般を指しています.
最新の医学的知識(サイエンス)を基礎にして,エビデンスのある治療を行うことが最も合理的であり,第1選択です.
しかし,それだけでは良い結果が得られない場合も多々あります.このような場合に,患者さんの生活の質を高めるためには補完代替医療が有益であることが少なくありません.

補完療法には温泉療法のほかにも,漢方治療,鍼灸などが代表的で伝統的に昔から親しまれています.近年では芳香療法(アロマセラピー),アーユルヴェーダ,ホメオパシー,音楽療法,アニマルセラピーなど多様な補完治療が行われています.
これらのなかにはエビデンスのあるものもあり,近代医療を補完する存在として期待されています.

患者さんによっては補完医療が非常に有効なケースもあります.
でもそれで満足してしまって,一般の診療を中断してはいけません.
補完的治療は継続しながらも,バックグランドに大きな疾病が隠れていないのかを,常に科学的な眼で観察してゆく必要があります.
補完医療は,近代医療の補助的な存在であることを忘れてはなりません.

今回は,補完医療としての温泉医療の位置づけについてお話させていただきました.
次回は温泉療法のもう少し具体的な内容について説明します.

あっというまに2ヶ月もブログ更新をサボってしまいました.
新型インフルエンザに関する発熱情報センターについての記事は,なるべく長くトップページにしておくべきだと思われましたので,ブログ更新は控えるようにしていました.
新型インフルエンザも一段落し,発熱情報センターのことも区民に周知されているようですので,久々にブログ更新を再開します.
言い訳はこれくらいにして,今日は私の好きな言葉をご紹介したいと思います.

Guérir quelquefois, Soulanger souvent, Consoler toujours

フランス語で良く分かりませんが,
「ときに癒し,しばしば支え,つねに慰む」

と訳される事が多いようです.
結核医療に尽力された米国ドクターの像に彫られている言葉です.
色々な和訳がされているのですが,私が特に好きなのが次の和訳です(何の本で見たのかは忘れてしまったのですが).

ときには治せることも
しばしば救えることも
しかし癒すことは常にできる

医師になって10年もすると何でも出来るような気になります.
その気になって,最先端の医療で,なりふりかまわず全力で病気と闘ってみるのですが,
でもどうにもならないことがあるんです.
不眠不休で色々やってみたけど,結局のところ一番私に出来て良かったと思えたことは,患者さんのベッドサイドに最期まで付き添えたことだけだった.ということが多く経験されます.

そんな時にこの言葉は心にしみるんですよ.

日本内科学会の総会・講演会が東京国際フォーラムで開催され,参加して来ました.
いろいろな内科臨床のup to dateに触れ,とても勉強になりました.
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参加した日は日曜日で,国際フォーラムでは学会とは関係なくフリーマーケットなども開催されており,天気もよかったので大変な人出でした.
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大学病院などの勤務医だった頃は,たしかに過酷な勤務状況ではありましたが,なんとかやりくりして同僚医師同士でカバーする事により平日開催の学会にも参加する事が出来ました.というか大学病院の頃は発表する側でしたので,無理矢理にでも参加する必要がありました.
しかし開業医になってみると,カバーの医師が確保困難ですので,平日の学会参加のためには臨時休診とする必要があり,患者様には大変なご迷惑をおかけする事になりかねません.
休日に開催したり,メインの講演が休日にも聴ける学会がもっと増えると良いのですが,わがままなお願いですね.
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