2010年3月アーカイブ

在宅療養とは(その2)の続き

在宅療養とリビングウィルは切り離せない関係にある.

リビングウィルという言葉を皆さんも聞いた事があるだろう.
一般的にリビングウィルとは,避けられない死に直面した場合に,1分でも1秒でも長く生かすためにあらゆる侵襲的な手段をもってしても延命処置を行うのか,それともそのような無理な延命処置は行わず静かにお看取りをするのか,患者さん本人が生前に自分の意志で決めておく事である.

避けられない死が迫った場合に,あまりに侵襲的で非人道的な処置は行わず,静かに親族一同で看取ることを「尊厳死」ともいう.

リビングウィルでは,多くのことを詳細にわたって決めておかねばならない.
例えば,食べられなくなったら点滴をするのか,経管栄養を行うのか,しないのか?
血圧が下がったら,昇圧剤を持続点滴するのか,しないのか?
呼吸が止まったら人工呼吸器を使うのか,使わないのか?
心臓が止まったら,心臓マッサージをするのか,しないのか?
その他,決める事が沢山ある.

これらの延命処置は,このブログを読んでいる皆さんには,あまり馴染みのない状況と思う.
実際に,臨終の際の延命処置ではどんなことが行われているのか,想像がつかないのではないだろうか?
それなのに,そのような重要なことを事前に決めておけと言われても,決められる訳がない.
身近でそのような経験をする機会があれば,是非知っておいてもらいたい.
生きていれば,誰もが必ず1回は経験する事なのだから.

さて,この延命処置の内容が解ったとして,それを希望するしないには,良いも悪いもない.
正しいも間違いもない.
それは,その人の生死観や人生観が決めるものであって,その人の生き方なのである.

在宅医療に話を戻そう.
在宅医療を受ける患者さんは,必ず何らかの慢性疾患を療養中である.
それらは急激に悪化するかもしれない.
急に状態が悪くなったときに,それが治療可能な急性増悪ならば悩む必要はない.
積極的に治療を行うべきだ.
必要なら入院治療をして,良くなったら再び在宅療養を行えば良い.

では,どうしても改善のしようがない状態だったらどうだろうか?
そのまま住み慣れた住まいで静かに息を引き取るのか,それとも無理を承知で1分でも延命するために救急病院へ救急車で搬送して,侵襲的な延命治療を行うのか?

決められないですよ,簡単には.

今回で在宅療養のお話はしばらくお休みします.
今後も不定期で在宅療養の事をお伝えしていきます.

在宅療養とは(その1)のつづき

このような「社会的入院」は医療費高騰の原因となっているだけでなく,そもそも患者さん自身が望まないことである.
やはり,人生の最期は住み慣れた自宅で過ごしたいという想いは,至極当然であると思う.

この患者さんの想いを実現するためには,沢山のハードルを乗り越えなくてはならない.
1)病気により何らかのハンディを抱えた場合の,生活面でのサポート
2)病気に対する,医療的なサポート

我が国では1)については介護保険,2)については医療保険で公的社会福祉サービスが受けれるようになっている.
1)介護(生活面でのサポート)については,その患者さんの身体的な障害度(衣食住なんでも自立して出来るのか,寝たきりに近い状態で全ての生活が介助が必要か)と精神的な障害度(認知症の程度)から,その人に必要な介護度が決定され,それに応じたケアサービスが自宅で受けられる.
2)医療(健康面でのサポート)については,通院可能な状況であれば通院治療が原則であるが,困難な場合は,今回テーマに挙げた訪問診療や訪問看護,訪問リハビリテーションなどを受ける事ができる.

一人の在宅療養を行う患者さんをサポートするためには,沢山の職種の密接な連携が不可欠である.

在宅療養というのは,その方の人生の収穫期に,より良い,より相応しい人生を送って頂くためのお手伝いであり,その人の人生観や家庭の中まで深く入り込むため,時には楽しく,時にはつらい事も多いのです.
私は在宅療養(訪問診療)とは,決して社会的入院の代替プランではないし,そば屋の出前的な医療サービスでもないと考えています.

つづく

今回は在宅医療とはというタイトルです.

前回の訪問診療と往診では,いきなり在宅医療の具体的な方法論から入ってしまい,在宅医療に縁のない方には混乱させてしまったのではないかと反省しております.
今回から,在宅医療について私の思うところを徒然なるままに書いていこうと思います.在宅医療とはこんなものなのかなぁというイメージを持って頂けたら幸いです.

また,これまでの自身のブログを読み返して,「〜です〜ます」調はとても読みづらいことに気づきました.
今後は「〜である」調に変更させて頂きます.
以前の方が良かったという読者の方は,受診の際にでも直接私に教えてください.

では・・・

訪問診療の具体的な方法論の前に,なぜ訪問診療が必要なのかを考える必要がある.

ご存知の通り,日本は世界的にも類をみないスピードで少子高齢化が進んでいる.
高齢者の方は健康を害しやすく,また病状も急変しやすいため,入院となってしまう事が多い.
一度入院してしまうと,ご家族は介護の負担から解放され,またさらに,病院に入院していれば安心であるという理由で,なかなか退院に応じてもらえない事が多い.
また,近年では核家族化の影響から独居老人も増え,独居生活への退院自体が困難な場合もある.
以上のように病状的には退院可能であるが,周辺環境の問題から退院出来ずに入院が長期化する「社会的入院」が問題となった.

以上のように冷たく書くと,いかにも家族が怠慢で悪者のように聞こえてしまうが,私が病棟医をバリバリやっていた頃の記憶でも,どんなに家族が頑張っても「こりゃあ自宅退院は無理だ」って状況がいくらでもあった.
そもそも家族も高齢者だったり,家族全員フルタイムで働いていたりするから.

最初に明記しておくが,ご家族は悪くないし,当然入院している患者さんも悪くない.私は悪者探しをしているのではない.
日本の社会保障システムや我々国民の意識が,急激な人口動態の変化についていけないのが原因ではないかと思っている.

つづく

毎週日曜日になると急病の患者様より休日診療依頼のお電話を多数頂きます.
これは毎週日曜日に白衣姿の私(院長)を芝浦アイランド内で見かけるため,休日診療をしていると思われている方が多くいらっしゃるのではと思います.
誠に申し訳ありませんが,毎週日曜日は外来休診とさせて頂いております.
日曜日に私の白衣姿が目撃されるのは,毎週日曜日が定期訪問診療日なので,訪問診療を行っているからであります.
ご迷惑をおかけしますが,日曜日,祝日と土曜日午後の外来は休診とさせて頂いております.

日曜訪問診療の合間に外来診療を行う事も不可能ではありませんが,ライム薬局さんはお休みです.
当院は院外処方であるため,日曜日に診療してもお薬は開いている調剤薬局さんを探して頂く事となってしまいます.
これでは結果的に大変なお手間となってしまいますので,休日の準救急受診は港区の行っている「休日診療当番医療機関」の利用をおすすめ致します.
これは港区内の医療機関が,当番制で休日診療を行うもので,当院もこの輪番制に参加しています.

港区休日診療所

ちなみに当院の前回休日診療は昨年12月30日でした..
多数の港区民の方々にご利用いただき,ありがとうございました.
なお,当院の休日当番日は無理をお願いして,ライム薬局さんにも開局して頂いております.
次回の休日当番は5月23日です.
港区民の皆様におかれましては,せっかくの休日に体調を崩して休日診療所などに受診する必要がないように,体調管理にはお気をつけ下さい.

「訪問診療」と「往診」 は同じ事を言っているようですが,実は大きく異なります.
本日は「訪問診療」と「往診」の違いについてご案内したいと思います.

「訪問診療」とは,定期的通院が困難な慢性疾患の患者さんに対して,計画的に医師が患者さんの居宅を訪問し,医療行為を行うことです.
これに対して「往診」とは,患者さんからの求めに応じて,その都度,医師が居宅を訪問し医療行為を行う事です.
なんのことやら,まったく解りませんね.

「訪問診療」は患者さんの状態に変わりがなくても,計画的に,定期的に医師が居宅に伺って定期診察をします.
「往診」は患者さんから「診察に来てください」と突然に依頼があって,本来は「訪問診療」を行う予定日ではなくても臨時で居宅に伺い,診察を行う事です.
「訪問診療」は定期的計画的であるのに対して,「往診」は準救急の状態です.
なんとなくイメージ出来ましたか?

解りやすい例にすると・・・

高血圧などの慢性疾患で,病院の外来に定期的に通院しているかたをイメージしてください.
毎月1回,定期的に予約をとって病院に通院していることと思います.
これの逆(定期的に患者さんが行くのでなく医師が来る)が「訪問診療」です.
このような患者さんも風邪を引いたりすれば,次の予約の前に予約外で病院を受診すると思います.
病院では予約外なので,かなり待たされると思いますが仕方ありません.
このような予約外の準救急受診にあたるのが「往診」です.

なんとなくご理解いただけましたでしょうか?
このような「訪問診療」などの在宅医療を積極的に行っている診療所を「在宅療養支援診療所」と言い,当院も関東信越厚生局より指定を受けています.

「訪問診療」を受ける事が出来る患者さんには条件があります.
最初にも書きましたが,定期的通院が困難な慢性疾患の患者さんです.
つまり慢性疾患があって定期的に病院に通院する必要があるが,寝たきりや認知症などの理由によって独力で通院する事が困難な患者さんです.
また現時点では,当院の訪問診療は芝浦アイランドとその周辺地域に限定させて頂いております,訪問用自動車がないため徒歩圏内です.

「訪問診療」についてご興味のある方は,お気軽にクリニックまでお問い合わせください.

今回は在宅医療のご紹介をしたいと思います.

皆さんは在宅医療というと,どのようなものをイメージしますでしょうか?
テレビドラマで見るような,自宅で病気で寝ている患者さんのところに白衣を着た医者がやって来て,診察したりしているものをイメージされると思います.
基本的にはそれと同じなのですが,実際にはもっと多岐にわたり,患者さんの居宅において色々な医療行為を行う事を総称して在宅医療といいます.
医師が直接居宅に訪問する「訪問診療」や「往診」をはじめ,自宅で酸素療法を行っている「在宅酸素療法」なども在宅医療です.厳密に言えば糖尿病患者さんの行っているインスリン自己注射だって在宅医療だと言えるでしょう.

これから数回にわたって,在宅医療,特に皆さんがイメージしている通りの「訪問診療」と「往診」についてご紹介していきます.

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